固定衛星通信(1)
 国際通信に使うインテルサット衛星



静止軌道に通信衛星を打ち上げ、常に同じ地点の間を結ぶ形態を固定衛星通信と呼びます。有名なのはインテルサットで、1965年にアーリーバードを打ち上げ、サービスを開始しました。サービス内容は、主に電話回線の提供ですが、データ通信での利用も可能です。



決まった地点の間を結ぶ固定衛星通信システムとしては、国際通信を扱うインテルサット(INTELSAT)が最も有名です。
インテルサットとは、各国の電気通信事業体に対して宇宙部分(軌道上の静止通信衛星とこれを制御する施設の総称)を提供する国際機関のことで、「国際電気通信衛星機構」と訳されています。
インテルサットの設立は、1961年7月24日のケネディ米大統領の呼びかけで具体化し、1964年8月に11カ国が加盟した暫定組織として発足しました。その後加盟国も増え、1973年2月に「インテルサットに関する協定」および「同運用協定」が発効され、恒久的な国際機関となりました。1995年1月末には、加盟国が131カ国に達しています。
世界初の商用通信衛星インテルサットI号(アーリーバード)は1965年に大西洋上の静止軌道に打ち上げられ、米国と欧州間で衛星通信サービスが始まりました。さらにインテルサットII号系衛星を経て、1969年にはインテルサットIII号系衛星(合計8機)が大西洋、大平洋、インド洋の三大洋上の静止衛星軌道上に打ち上げられ、全世界をカバーする衛星ネットワークが完成しました。
1995年3月時点では、大西洋、大平洋、インド洋上で22機(主にV号系とVI号系)を運用中で、全世界をカバーしています。引き続きVII号、VIII号が開発されています。
インテルサット衛星は技術の進歩と国際間通信の需要の増大に伴って次第に大型化、大容量化してきています(図1)。I号衛星の通信容量は電話240回線またはテレビ1チャネルだったのが、V号系衛星は電話1万5000回線+テレビ2チャネル、VI号系衛星は電話3万3000回線+テレビ4チャネルと飛躍的に増大しました。
固定衛星通信では地球局は陸上に置かれるので、海上に電波を照射することは無駄になります。そこでV号系衛星以降は衛星からの電波のビーム幅を絞って陸地の部分だけを照射するスポット・ビーム・アンテナやマルチビーム・アンテナが使われています。V号系衛星では、6G/4GHz帯の半球ビームとゾーン・ビームがそれぞれ東西の大陸上を照射し、さらに通信量の多い北半球の一部のみを照射するスポット・ビームがあります(図2)。


主用途は電話回線だがデータ通信もサポート


インテルサット衛星を使った主なサービスは、1.電話回線(大容量、小容量)、2.テレビ伝送、3.IBS(インテルサット・ビジネス・サービス)、4.INTELNET、5.トランスポンダのリースまたは売り渡し、などです。
通信量の大半は電話回線で、アナログ(4kHz)とディジタル(64kビット/秒)があります。大容量のアナログ電話回線にはFM/FDMA(周波数変調/周波数分割多元接続)方式が使われています。一方、大容量のディジタル電話回線ではTDMA(時分割多元接続)/DSI(Digital Speech Interpolation)を使います。DSIは、ある音声信号のすきまに別の音声信号を挿入して、回線の利用効率を高める方式です。
IBSは企業向けにディジタル統合通信回線(64k〜8.448Mビット/秒)を提供するものです。INTELNETは、親地球局と多数の小型地球局(VSAT)でネットワークを構成し、低・中速データ伝送サービスを提供するものです。
国際衛星通信システムとしては、インテルサット以外にも、旧ソ連圏諸国で構成されたインタースプートニク(InterSputnik)があります。また、欧州諸国が加盟しているユーテルサット(Eutelsat)やアラブ連盟諸国が加盟しているアラブサット(ARABSAT)があります。これらもそれぞれ2〜4機の衛星を保有しています。
図1 インテルサット衛星のI号とVI号の外概比較 図2インテルサットV号衛星がカバーする範囲(大西洋上衛星の例)
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