固定衛星通信(2)
 国内通信での衛星利用



衛星通信は1970年代から、国内通信にも適用されてきました。日本では現在5機の国内用通信衛星が稼働中で、離島への電話回線や、非常時のう回路として使われています。海外では、広大な国土を持つロシア(旧ソ連)やカナダなどが先行して国内衛星通信を利用中です。


衛星通信は1960年代に大陸間を結ぶ国際通信の分野で発展を始め、1970年代には各国の国内通信や地域通信の分野へ拡大されていきました。
日本では、1983年から通信衛星CS-2が、小笠原諸島などの離島への電話回線、車載局による災害時の通信や、イベント開場でのテレビジョン伝送などの臨時回線に利用されました。またビジネス用に、衛星通信の特長である広域同報性と多地点アクセス性を生かして、データや映像を伝送する専用回線としても用いられてきました。
1988年にはCS-2の後継機として、CS-3が打ち上げられ、地上の市外中継回線でのトラヒック変動分やオーバーフローした通信をう回させるための回線としても使われるようになりました。離島への回線や市外中継回線のう回回線にはTDMA(時分割多元接続)技術を活用しています。95年8月には寿命の尽きたCS-3の代わりに、NTTによってN-STARが打ち上げられ、CS-3のサービスに加えて移動通信にも利用されています。
この衛星回線はディジタル回線なので、公衆網の中継回線だけでなく加入者系にも適用して、ISDN(総合ディジタル通信網)サービスを全国どこででもすぐに提供できる可能性を秘めています(図1)。
1989年には民間の通信衛星が打ち上げられ、JCSAT3機とスーパーバード2機が運用されています。周波数帯は、CS-3がKaバンド(30G/20GHz)とCバンド(6G/4GHz)を、JCSATはKuバンド(14G/12GHz)を、スーパーバードはKuバンドとKaバンドを使っています。N-STARのKaバンドは中継回線や加入者回線に、Cバンドは離島への回線などに使われています。
民間通信衛星は、CATV(ケーブル・テレビ)への番組配信(スペース・ケーブルネット)、山間部や離島などからのテレビ生中継や事故現場からの映像伝送(SNG:サテライト・ニュース・ギャザリング)、ファクシミリやデータ伝送、テレビ会議などのための企業内ネットワークなどに利用されています。


広大な国土を持つ旧ソ連やカナダが先駆け


ところで、世界で最も早く国内衛星通信システムを作ったのは、広大な地域をカバーする必要があった旧ソ連です。1965年に通信衛星「モルニヤ」がソ連初の通信衛星として打ち上げられました。
今日の通信衛星の大多数は静止衛星を使っています。静止衛星は赤道上空に打ち上げられているので、旧ソ連のように緯度が高い地域では、アンテナが水平の方を向くので障害物などの影響を受けやすい、電波が空気中を通る距離が長くなるので弱くなる、といった問題があります。
そこでモルニヤ衛星は、高緯度地域での通信に有利な、長楕円軌道の周回衛星を使っています(図2)。これは現在でも世界唯一の特殊な軌道を持つ通信衛星です。
ソ連に続いたのはカナダで、1972年にアニク衛星を打ち上げました。これは静止衛星の国内通信用としては世界初です。米国は1974年に国内通信用のウェスタ−1号を打ち上げて、現在32機が運用中です。
アジアではインドネシアが、1976年にパラパ衛星で国内通信を開始しました。世界で4番目です。広い海域に1万4000もの島々が散在するので、衛星通信が効果的です。1980年代に入ると、日本のほかオーストラリア、フランス、ドイツ、インド、メキシコ、ブラジルなどが国内衛星通信を開始し、現在十数カ国が運用しています。
図1 国内公衆網(ディジタル電話網、ISDN)への衛星通信方式の導入 図2 旧ソ連のモルニヤ衛星の長楕円軌道 周期時間の周回衛星で、北半球側の高度が高く、通信の中継に1日あたり16時間利用できる。
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