小型アンテナを使うシステム
 VSATとSNG



衛星通信では、直径1m前後の小型アンテナを使う地球局をVSATと呼びます。VSATは、各地に分散して配置され、通信の管理・制御機能を備えた親局と衛星経由で通信します。本支店間の業務連絡や遠隔教育、ニュースの中継などに利用されます。


衛星通信では衛星や地球局の高性能かが進み、さらに使う周波数がCバンド(4G/6GHz帯)からKuバンド(12G/14GHz帯)に移るにつれて、直径1m前後の小型アンテナが使えるようになりました。
このような小型アンテナ(直径0.6〜2.4m程度)を使う地球局はVSAT(超小型衛星通信地球局)と呼ばれています。VSATは多数の地点に分散して置かれ、大型のアンテナを備えた親局(ハブ局)が通信衛星を経由してVSATに多量のデータを送るのが一般的です(図1)。通信の管理・制御機能を備えた親局を中心とする、スター状構成のデータ通信ネットワークです。
VSATシステムでは、親局からVSATへの回線をアウトバウンド回線、VSATから親局への回線をインバウンド回線と呼びます。アウトバウンド回線は伝送速度の速い回線で、各VSAT向けデータの多重化に時分割多重(TDM)方式を使っています。インバウンド回線は多数のVSATからの低伝送速度の回線で、主にパケット伝送が使われます。そのほか要求に応じて回線を割り当てる多元接続(DAMA)方式も使われます。
VSATシステムは小売業におけるクレジットカードの確認・照会やPOSデータ伝送、金融関連でのオンライン端末とホスト・コンピュータ間のデータ伝送、ホテルやレンタカーなどでの予約データの伝送などに使われ、米国を中心に急速に普及しています。
日本でも、センターのスタジオと各地にあるリモート教室を衛星通信回線で接続し、映像と音声の双方向通信によって授業を行う遠隔教育などにVSATが使われています。
このようにVSATシステムは、広い地域に分散した多数の小容量トラヒックを、衛星回線を使うことで経済的・効率的に取り扱おうとするものです。


迅速な報道体制を目指してSNGシステムも発達


小型アンテナを使うことで急速に発展したものにSNG(サテライト・ニュース・ギャザリング)があります。移動局を車などで取材現場に運び、映像ニュースを衛星経由で直接テレビ局に伝送するものです(図2)。
衛星通信における回線設定の柔軟性・迅速性という特徴を生かすことで、報道取材に要求される速報性にこたえることができます。車載局や可搬型地球局は報道現場にいち早く到着し、現場からの情報を素早く送信できるように、設備の小型軽量化が図られています。アンテナが自動的に衛星の方を向くようにする制御装置も用意されています。
これまでは場所によっては何回も中継したりするために、態勢の整備や機器の調整に時間がかかったり、無線を使うと電波が障害物でさえぎられるといった問題がありました。しかし、SNGができたことで、事故現場や戦場からの生中継や、離島・山岳地帯などからの直接映像中継が可能になりました。
SNGは米国では1985年ころから始まり、その後急速に普及して現在では全米で活躍しています。日本でもテレビ放送会社が民間通信衛星を使って系列局を含めたSNGネットワークを構成するなど、広く使われるようになっています。
図1 VSAT(超小型衛星通信地球局)システムの概念図
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図2 SNG(サテライト・ニュース・ギャザリング)システムの概念図
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おつかれさまでした。これでぼくが作成した内容はおわりです。これで、『日頃よく耳にするけど衛星通信っていったいなんなの…』といったような疑問も解消されたのではないか思います。さらに詳しい、技術的な内容も含んだ話題が桃井のホームページに記載されています。用語集もあり、内容が充実していますので、もう少し衛星通信について調べてみたいというような方は桃井のページを参考にして下さい。
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