「ビジョンフォーラム--21 世紀の大学のルネッサンス」-- 基調講演    1999-9-8 「これからの大学の役割」(レジュメ) 明治大学 理工学部 向殿 政男   建学の精神     時代の流れ・要請     │          │     │          │             ↓          ↓    大学の役割───→変化への対応──→ 新しい ─┐     ↑  ↑             大学の役割 │     │  │                   │     |  └───────────────────┘   教育の   基本理念           図 1 1.大学の役割   --不易流行:変わらぬ面(理念)と時代への対応の面(実際的対応)-- (1)教育(学習機関(個人に):学ぶ→人材育成(社会に):教える→人材供給(企業    に):選ぶ(?)→?)   --何故大学に行くのか?--   *ものの見方・考え方・勉強の仕方を学ぶため(如何に生くべきか/自己実現を目指    して/人格陶冶/人との触れ合い)   *人間としての教養を身につけるため(教養人の育成/教養的知識の吸収/リベラル    アーツ/知的好奇心を満たす/学習)   *将来の仕事の役に立つ知識と技術を身につけるため(職業人の育成/専門知識の吸    収/高度専門職業人教育/キャリアアップ/就職/資格)   *その他(?)(遊ぶ、モラトリアムを楽しむ、皆が行くからなんとなく、卒業する    こと、就職すること) (2)研究(研究能力開発(個人に)→研究開発(社会に)→共同研究(企業に)→?)   *研究実施・技術開発(知的創造/独創性/情報発信/新しい産業の創出)   *研究者養成、後継者養成 (3)知識・文明・文化の伝承(図書館/博物館/マルチメディアラボ) (4)地域・社会・産業への貢献(地域振興/地域産業育成/地域交流/市民サービス/    公開講座/大学開放/社会の構成メンバー/産学連携) 2.わが国の大学を取り巻く時代の流れ (1)少子化/高齢化--全入時代/大学間競争の激化/大学間格差拡大 (2)情報化--インターネット/マルチメディア/衛星通信 (3)国際化/グローバル化/自由化/オープン化/ボーダレス化--競争原理/第三者   評価/相互評価/社会貢献/情報公開/大綱化/カリキュラムの自由化/自己点    検・評価/フレキシビリティ (4)高度技術革新--情報・通信技術/生命科学 (5)社会の変化--年功序列の崩壊(能力主義・人事の流動化)/企業内教育から専門   家採用へ/---/環境の重視/福祉の重視/共生の思想/--- 3.迫られる対応 (1)教育の対象:若者から社会人へ/社会人教育/生涯教育・生涯学習 (2)*教育の内容:画一授業から多様化へ/知識習得→問題解決→問題発見/補習/教   養/リテラシー教育/基礎教育重視/専門教育/インターンシップ/職業人養成/研   究者養成 (3)入試の形態:落とすから集めるへ/入試の多様化/評価基準の多様化/入試体制の   抜本的改革/ (4)大学評価:教育内容の評価/教育組織の評価/卒業生の実力評価/社会・企業・学   生本人からの大学評価/入口(入試)→内容(カリキュラム)→出口(実力)の評価   /情報発信 (5)教員評価:複眼的評価(授業・研究・管理運営・社会貢献)/任期性 (6)授業形態:昼夜開講制度/遠隔授業/エックステンション/ウエッブを用いた授業   /バーチャルオフィスアワー//大学連携/単位互換 (7)大学院へのシフト:6年一貫教育/高度職業人養成型大学院 (8)経営の問題:合理化/素人教員経営から職員による経営の専門化へ/授業料の抑制   と納入形態(年学費から単位授業料へ/一括制からセグメンテーションへ)/人件費   の抑制/人員削減 (9)意思決定組織の改革:教授会組織改革/対応のスピード化/ (10)競争の激化:国立の独立法人化/県立・市立大学の設立/短大の生き残り作戦/   吸収合併/棲み分け 4.情報技術の果たす役割 (1)情報の教育から教育の情報化へ--コンピュータ教育(言語教育)/情報リテラシ   ー教育/情報倫理教育/情報技術を道具として活用する教育/事前・事後・自己学習   /グループ学習/インターネット/ホームページ活用学習/遠隔学習 (2)キャンパスの情報化--計算センター設置/情報教室の整備/校内LAN 構築(キャ   ンパスネットワーク)/事務の情報化/インターネット接続/衛星通信設備/イント   ラネット構築/全教室の情報環境整備 (3)教育の情報化で何が出来るか?    高級文房具としての/効率良く学習するための/面白く・やる気を起こさせるため    の/創造的学習のための、道具である ***近未来のキャンパスの情報環境の在り方***  --いつでも、何処でも、誰でも、自由に安心して情報接続可能な環境--  ・すべての学生、教員、職員は自宅用と携帯用の情報端末(パソコン)を所有している  ・大学内のすべての空間(教室、施設、キャンパス内)で(無線、有線を通じて)自由   に情報接続できる  ・大学外部(世界中)からもアクセス可能  ・大学内には常に最新の情報設備が整えられている  ・セキュリティの整備が必須  ・運営管理はアウトソーシング  ・情報武装がこれからの大学の生き残り作戦  ・常に情報発信/情報公開(受験生は情報をインターネットを通じて)  ・ほとんどの授業は情報機器を利活用  ・遠隔授業、在宅/在職受講が可能に  ・分散ゼミ  ・他大学とのコラボレーション授業  ・バーチャルユニバーシティ  ・バーチャルミュージアム  *今後の動向:情報環境→情報コンテンツ  *明治大学の情報環境は? 5.これからの大学の在り方  --共生しながら競争する世界--  *流動化が始まった(超安定時代から激動の時代へ)  *流動化の時代は私学にとってチャンス!!(教育-- サービスの時代) (1)常に大事な視点:  *「時代の中に在る大学」という歴史的観点が必要  *大学はあくまでも人間教育が中心であり、教育はフェイス・ツー・ファイスが基本で   ある  *流動化の時代には、理念に基づいて時代に対応したビジョンを持ち、その実現に向    かって努力する (2)情報化:  *情報技術の発達で、大学は新しい時代に入った  *情報技術は道具である。ただし、道具の発達が質を変える (3)グローバル化:  *アメリカ流の競争原理を導入する(今いわれているグローバル化)だけでは混乱を招   くのみ。日本の歴史と風土に基づいた新しい共生と競争の原理を見い出す必要があ    る。 (4)少子化・高齢化:  *教育の重視と教育形態の多様化--教育と研究の分離  *総花的展開は不可能---特色を持たせるしかない/個性化/独自性/アイデンティテ   ィの確立/類別化(何時の時代も同じはず--今までは文部省指導による同質化)  *基礎教育(学習)、専門教育、研究・開発の3っに類別化されて行くだろう。  *教えるから共に学ぶ場へ(プロデュース能力、企画能力がメインに) (5)対応:  *認定権の庇護のもとにある機関(文部省+学位認定機関)から社会が評価する実力と   魅力と誇りの機関へ  *評価の重要性--大学の第3者評価(教育プロセス/カリキュラム/教員評価)、学   内での評価(教員の評価(研究・教育・管理運営・社会貢献)、学生からの評価、学   生に対する評価)、学生の実力の第3者評価--目的はランク分けでははく、自らの   レベルの向上にある  *流動化の時代は私学にとってチャンス!!-- 一つ先の波に乗る-- 対応のスピード   が鍵 --- 理念(建学の精神)に基づくビジョンは必須  *まず、色々なことをやって見て、進んでいくことも必要(建学の精神の実現を求めて   :GA の発想) 6. まとめ (1)基本理念: 機会の平等(結果の平等にあらず) (2)その為の手法:特色ある教育充実/情報公開/評価/インセンティブ (3)大学としての戦略  *大学間: 共通--競争--分担  ・基盤の標準化:グローバリゼーション(共通)とその上での競争(大学とし ての特    徴:学風を拡げる)   ・事務の基盤の標準化(フォーマット化)--かなりの部分を共通にしてアウトソー    シングできる   ・教育モジュールの共同開発・共有   ・幾つかの大学と共同教育、分担教育  *大学内: 地域+企業+OB との共同・協力        (OB 組織の充実と協力)  *各大学が建学の精神に基づき各々特色を発揮するよう、戦略を持つこと (4)明治大学における情報の戦略:  (1) 情報環境の整備  (2) 情報コンテンツの充実  (3) 人間と情報の出会う「場」の醸成-- お茶の水カルチェラタン-- (5)当面のキーワード:・インターネットの利用と大学のデジタル化            ・対応のスピード、            ・若い人に任せる -------------------------------------- (その他メモ)  *大学の経費:学生納付金、税金、寄付、外部資金導入、委託研究、事業展開、資産運   用、特許運用(TLO)、コスト削減(運用費、給与)  *学費の問題:一括納入に対する疑問、費用の内訳は?、単位支払い  *これからの指導理念:公平観--機会の平等(結果の平等ではない)  *新しい分野: (a)情報科学、生命科学、物質科学、--科学技術(産業を拡大)          (b)環境、安全、福祉、倫理、--- 価値観(評価、制御する)          (c)デジタル 芸術、--美とエンタテーメント   の三者のバランスがわが国としては必要