第5章 考察
5−1 考察
第二次世界大戦後にアメリカは核と暗号技術を戦略的要件として重視してきました。
しかし、冷戦の終結によって核の重要度が下がったため、
代わりに暗号技術が重要視されるようになりました。
この情報戦争というものは、情報の収集、分析力が戦場を支配するというもであり、
このため、暗号技術は軍事的な目的で使用されることがほとんどでした。
しかし、インターネットの普及によって暗号技術というのもに変化が訪れました。
インターネットによって暗号が民間の手に移り、政府の独占物ではなくなったのです。
しかし、そのようなことになると情報の中に政府の目の届かない部分ができることになります。
そのため、アメリカ政府は民間の暗号使用に制限を課そうとしたわけです。
その結果、民間からの激しい反発を受けて両者の間で暗号戦争が展開されました。
暗号技術の主導権を握ることが今後の情報分野における主導権を握ることになるわけです。
現状ではアメリカ製の暗号が広く使用されており、
暗号技術に関してはアメリカが他より一歩リードしている状態です。
これに対して日本製の暗号は優秀性は世界的に認められていますが、
それだけでは世界の標準となることはできません。
これには技術的な問題だけでなく、政治的な問題があるようです。
金融、通信をはじめとする多くの分野においてインターネットの利用はこれからも増大すると思われます。それと同時に情報を保護するための暗号技術もまた重要視されていくでしょう。その中で日本が優位に立つためには国民全体の意識の変化が必要なのかもしれません。