3.1.2 マルチエージェントシステムとは


エージェントとは人間社会など集団活動において自立的に行動できる知的主体である。一般的に、ネットワーク上における処理の代行者という意味がある。マルチエージェントシステムは(Multi-Agent System、以下MASと略記)は当初、分散人工知能(Distributed Artificial Intelligence、以下DAIと略記)の分野で研究が始められた。

DAI:単一の問題解決器、単一の計算機、または単一の計算が不適切であると見える問題に関心があり、複数の独立な問題解決器を利用する。

DAIは以下の2つに大別される。

分散解決問題と呼ばれ、全てのエージェントが目標を共有し1つの問題を解く。

マルチエージェントシステムと呼ばれ、共通の目的の存在を仮定しないため、エージェントの自立性がより強調される(研究対象はエージェント間の相互作用と工学的な応用)。

従来のAI:単一の知性を計算機上で模倣

DAI:複数の知性を計算機ネットワーク上で模倣

 マルチエージェントシステムとは情報通信分野において、インターネットなどの次世代を担う生活環境の中で、効率よく上手に人間の手助けをしてくれるような「知的」ソフトウェアを一般的に指す。しかし、現状のエージェント技術はまだ未熟な段階にあり、「知的」な側面よりも「技術的」な側面に重きが置かれているのが実状である。技術的な側面はこれまでも計算機の応用において十分に重視されており、これだけではエージェントと呼ぶ必要性はない。従って、どのように知的であるべきかや、それが本当にユーザーが期待するものなのか、多くのエージェントによりどのような問題が生じるかなど、本質的なことに関してほとんど議論されておらずこれからに期待する部分が大きい。

 エージェントとは、もともと「代理人」という意味があるが、必ずしも人である必要はなく、それがある種の結果を引き起こすものならばエージェントと呼んでもよい。また、マルチとは文字通り「多くの」を意味するため、ここで扱うマルチエージェントとは「代理人の集まり(多くの代理人)」を指すことになる。