4-5 情報化による個人への影響〜一人一台情報端末の時代〜
石畑ゼミナール
責任者:新堀 善丈
参加者:小谷 慶彰、韮澤 和哉、藤森 岳彦、鵜澤 秀明、志村 康司、中溝 私歌、五十嵐 篤史、八住 雄太
- まえがき
ここ数年で急速に普及した携帯電話は、電話ではなく、電話の機能を備えた携帯情報端末である、と言う人がいます。言われてみれば確かにその通りです。
MP3データを再生してウォークマン代わりになったり、デジタルカメラの機能がついたりと、多機能にわたっています。しかし多くの機能の中で最も重要なのは、固定された環境でしか使えなかったインターネットを移動体でも可能にする環境を作るに至ったことではないでしょうか。これが携帯情報端末と言われる所以であると思われます。
これを利用した、多くのサービスが実現しました。電車の時刻表の検索をしたり、位置情報利用システム(ActiveBadge/GLI)による現在地の検索などができるようになったりと、例を挙げればきりがありません。さらに最近では技術の向上により、携帯電話で撮った写真をメールで送受信したり、テレビ電話の機能をもったものまで登場し、より大容量のデータの送受信が可能になりました。今や携帯電話は単なる電話ではなく、大容量のデータを扱える携帯情報端末として進化を続けているのです。これが、未来において、個人と情報の関わりに密接に結びついてくると思われます。
- 未来の展望
未来において、一人一台の携帯電話という図式は多分成り立つようになっていると思います。つまりは情報の収集口として携帯電話を誰しもが使えるようになるということです。情報と言う観点から言えば、巨大なネットワークが構築され(インターネットの拡大化)、どこにいても自宅、会社にあるパソコンと接続できるようになっているはず(簡単化された形で実現されているはず)です。また、個人が情報端末を持つ事で、さらなるコンテンツの充実がされていると思われます。そうなると有り得るのが、個人の認識を行なう上での身分証明証としての機能(各人にIDなど識別番号を配布する事で、例えばクレジットカードや銀行カードなどの役割も果たす)です。つまり、財布の中にある紛らわしいカードの類や、面倒な小銭の扱いも携帯電話を通して全て出来るようになるわけです。 買い物なども全て携帯電話で済ませ、電子マネーで引き落としされるようになるかもしれません。つまり、携帯さえあれば、どこにいようが何でも出来るという環境を作られるということです。これほど便利な話はありません。
- 課題点
しかし、これを実現するにはさまざまな障害があります。身分証明証としての機能を持つ場合、当然セキュリティーの問題が起こってきます。情報化社会の進展によって個人単位での管理が行われるなかで個人情報をどのようにして守るのでしょうか?
現在でも個人のメールアドレス、電話番号、パソコンのパスワードなどは簡単にばれてしまいます。こういった暗号化などのセキュリティーを総括する機関、例えば世界各国が集まって、個人情報の管理を行うなどの具体的な方法が確立されないと、実現は難しいでしょう。
次に便利さの裏に潜む悪影響についても考えなければなりません。もし一人一台携帯情報端末をもつことが将来定着したとすると、こんどはそれに頼りすぎる余りに、逆にそれがないと生活できないような社会になるかもしれません。それは逆の意味で不便であるとも言えます。
また、端末がその人自身をさすシンボルのようになってしまう可能性もあります。現在、携帯電話を持つようになったら常にそれに縛られるようになって嫌だと言う人もいるのに、携帯情報端末がその人自身であるような社会になれば、ますます束縛されることは間違いありません。つまり、人間がコンピューターを管理するのではなく、人間がコンピューターに管理されるような構図ができてしまうかもしれないのです。
そうすれば、情報端末に囲まれた生活で、人と接する機会が少なくなることも考えられます。形のないものに生活を縛られることによって、生活に閉塞感を感じるかもしれないですし、ずっとそのような状況で暮らすことは精神的にもよくない影響をもたらすかもしれません。
- まとめ
今までのことを踏まえて考えると、情報化社会の発展にはセキュリティーなどのまだまだ解決していかなくてはならない問題が数多く残っているということがわかります。また、情報技術の発展や情報化社会が個人に与える影響は、私たちの生活を豊かにする可能性と同時に生活を廃らせる危険性もあるものです。
これらを解決していく手段として最も重要なのは、やはり人々が情報技術に関心を持って、これに利用されるのではなく利用していくようにならなくてはいけないと思います。とはいえ、情報とはあまり縁のない中年より上の年齢層の人々には、なかなか難しいことは確かですので、なるべくわかりやすいインターフェースの開発や、一般の人の意見がすんなりと業界に反映されるようなシステムをつくることがこれからはより必要とされてくるのではないでしょうか。
- あとがき
理想の情報化社会とはいったい何なのか?というと、多くの情報の中から本当に自分にとって必要な情報を選択する能力とそれを利用する知恵が、ますます我々に求められる時代になってきたと思います。必要な時に、必要な情報が、必要な人に届く、それが目指すべき理想の情報化社会といえるでしょう。