1-4 マルチメディア住宅と呼ばれるまで
玉木ゼミナール:
責任者:植松亮司
参加者:上坂陽平、仲澤健二、王 思翰
- まえがき
みなさんが小さいころに思い描いていた未来とはどんなものだったでしょうか。子供のころ考えていた21世紀とは、都市は全部未来型の都市となり、対話型の形式で機械という機械とコミュニケーションを取りながら、自分が何もしなくても何不自由なく生活ができる。また、車は宙に浮き、行きたいところへ自動で行ってくれる。こういった考えは皆さんにもあったはずだと思います。これは単なる夢だ、ただの空想であったという人もいるかもしれませんが、未来というところは現在の考えの及ばない面が数々あるところで、将来本当にこのような未来になるかもしれないし、ならないかもしれないのです。
- 導入部
最近では、携帯電話は持っているが、住まいには電話を持たないという大学生が増えてきました。このように、情報技術の出現によって生活習慣が変化していくのもまた、情報化社会の身近な一例です。さて、情報とは何でしょうか。情報化社会とは情報に商品価値がついた社会ですが、逆に言うとそれを得ることによって何らかの利得があるからこそ「情報」として機能しているのです。情報化社会において、情報とはただの「データ」ではなく、情報の受信者がそれに価値(=意味)を見出す作用があってこそのものであり、情報とは「意味作用を有するパターン」であるといえます。そこで、今一度自分のライフスタイルをイメージしてみて下さい。その中でインターネットやeメールをしている時の姿を思い浮かべた人も少なくはないでしょう。現代人はいつしか情報に敏感なアンテナを持つようになっているのです。そんな時代の中で、より快適な暮らしを追求するためには、私たちの住宅がマルチメディアになることなのです。マルチメディアとはコンピュータと通信が結びつきネットワークを流れる情報を一元的に扱うことで実現する、複数のメディアの共存であり、多くの手段が統合された情報伝達手段方式で、文字や音声、映像、数値データなどのさまざまな情報を、自由に組み合わせて扱え、通信網を介してどこでも誰でも情報をやり取り出来るものです。私たちのライフスタイルの中に、徐々に情報技術が浸透していき、情報化社会が世の中ではもはや当たり前になっているそんな時代の"家庭"に着目して、その未来と課題について、大胆にも予想していこうと思います。ではさっそく、数年後のマルチメディア住宅を覗いてみましょう。
- 未来の予想、予測
「リビングに入るとそこはどこかすっきりしています。何故でしょう?それはテレビ台や電話機がないせいです。テレビはどこと思った瞬間に壁にメッセージ画面が現れました。60インチ超大型画面のテレビは、厚さわずか6センチのPDP(Plasma Display Panel)となって、壁に安息の地を見出しています。この『リビングモニタ』は、2003年からのサービスが開始されている地上波デジタル放送やUXGA(1600×1200ドット)のコンピュータ画面に対応しています」。
NHKでは、2003年から地上波デジタル放送のサービスを開始し、2010年にはアナログ放送を終了させる予定で、民放各局も同時期に切り替えが行われると考えられ、これにあわせて従来型テレビの買い替えも進むでしょう。
液晶ディスプレイやFED、有機ELディスプレイなどいくつかの方式がありますが、リビング用モニターには大型画面が特徴のPDPが最有力でしょう。
「また、壁のメッセージを見ると、留守中に電話が2件あったことがわかりました。電話機はどこかなと探しますが、モジュラーコンセントには電話機の姿がなく、ケーブルだけがリビングラックに延びています。各自が自分専用の電話機を携帯するようになり、リビング用電話は置いていません。ケーブルの先には、インテリアとしてもきれいなパソコン『ホームサーバ』が置かれています」。
ホームサーバは、住宅内の情報を交通整理するルータ機能と、情報を取りまとめるサーバ機能を併せもった凡用パソコンです。留守中なども省電力モードで常時動いており、電話や電話回線を使用して外部から届くデータ、住宅内を駆け巡るデータを監視しています。例えば、住宅内LANのデータの行き先が住宅外であれば、ホームサーバは一瞬のうちにインターネット・プロバイダに電話をかけてダイヤルアップ接続し、通信がすみ次第回線を切断します。この機能で通信コストはかなり抑えられます。また、住宅内LANに接続された複数のマシンで、同時にインターネットにアクセスすることもでき、つながりっぱなしの専用線を持つ会社や学校とほぼ同じ感覚で、自宅でネットワークを利用できるようになります。また、CATV加入住宅では、ケーブルを利用して最大30メガビット/秒の高速インターネット接続がいつでも利用可能となります。
住宅で各部屋に必ず行き渡っているもの、それは電力線です。電気コンセントがそのまま住宅内の広域LANの情報コンセントになります。100の交流電流にFM変調で通信信号を載せる電力線搬送技術を使って、1メガビット/秒(現在のISDN回線の15倍程度の速度)ほどの通信ができます。冷蔵庫や電子レンジ、エアコン、洗濯機、証明などの電力線LAN対応家電は、電気コンセントから電力とともに通信データを送受信します。ホームサーバは家電製品からのお知らせ情報や警告信号をリビングモニタのメッセージ画面や各自の携帯電話などに通知します。また、外出先からエアコンや照明を遠隔制御することができます。住宅内LANの通信パケットが電力引き込み線から住宅外にも漏れ出したり、外部から通信パケットが住宅内に引き込まれる可能性もあるため、プライバシー管理やウィルス検出などのセキュリティ対策も忘れてはいけません。
住宅の情報化のポイントをまとめると、大まかに「情報コミュニケーション」「在宅ワーク・学習」「家事・リモートケア」「娯楽・リラクゼーション」の4つになります。
「情報コミュニケーション」とは、社会との窓となり、住宅外との情報アクセスやコミュニケーションをサポートするものです。欲しい情報の種類をあらかじめホームサーバで設定しておけば、プッシュ型インターネットで天気予報やニュース、ゲレンデ情報などが自動的にリビングモニタにやってきます。また、メールや電話などを自由に選択して連絡を取り合います。
「在宅ワーク・学習」とは、在宅勤務や在宅ビジネス、学校教育や生涯学習をサポートするものです。オフィスワークの在宅勤務が可能となりますが、むしろ主婦や自営業者、退職後のシルバー層が在宅ビジネスやボランティア、NPO活動などで社会と関わり合うための大きなチャンスを得ます。学校教育や生涯学習では、インターネットを活用した教育プログラムが本格的に登場し、非常に専門分野に特化した遠隔授業が自宅で受講できます。
「家事・リモートケア」とは、家事や遠隔介護、遠隔診療などの福祉をサポートするものです。例えば、ホームページ上で食材を注文すると、自宅に食材が宅配され、料理ブックに付録のレシピデータをオーブンレンジにそのまま転送して調理をしたり、オーブンの焼き具合をデータとして記録し、自分のホームページで公開する事ができます。また、離れた場所で暮らしている老人と、カメラで顔を見ながら会話をしたり、ポットの電源をモニタリングするなどして、介護や健康状態の確認ができます。
「娯楽・リラクゼーション」とは、楽しみやくつろぎをサポートするものです。個人の好みよって、楽しみ方、コンテンツはさまざまでしょう。
- その時の問題点と課題、またそれを解決する方法や見通し
まず問題点は、莫大なコストです。しかし、今までを振り返っても、コストは年々抑えられているものなので、この問題ももはや時間が解決してくれるものでしょう。マルチメディア住宅は便利な反面、ひとたび停電が起こればさまざまな機能が停止してしまいます。また、インターネットを介してのいたずらや空き巣狙い、コンピュータウィルスによる被害などの危険性もあります。プライバシー管理やウィルス検出などのより高度なセキュリティ対策が必要となるでしょう。
- 考察、意見
上記に述べたマルチメディア住宅像はほんの一部だとは思いますが、もはや時間、空間や距離を越えた世界であることがうかがえます。しかし、何でも家でできるようになると、人と人とのコミュニケーションがなくなるのではないかと懸念された人もいるのではないでしょうか。でも、それは違います。手軽に出せるメールがあっても、人は年賀状を書きます。また、オンライン・ショッピングが発達しても、デパートに行く人がいなくなったりはしないでしょう。
つまり、マルチメディア住宅とは、ライフスタイルをより快適にするための選択肢を増やしているのです。自分に必要なものを取り入れていけば、そこにその人のライフスタイルが十二分に反映されるのです。ただ、やはりセキュリティ対策には、十分備えなければいけません。
- あとがき
マルチメディア住宅はとても素晴らしい環境です。しかし、コンピュータに頼りすぎてしまうといざ問題が起きてしまった時に対応が出来ない不安もあります。やはり、何においても大切なのはバランスなのではないでしょうか?つまり、アナログで特に差し支えなく出来ることはなるべくすべきだと私は思います。あくまでもこのマルチメディア住宅でのコンピュータは、人間の暮らしをより快適にするための道具なのですから。コンピュータによって人間が生かされるのではなく、コンピュータによって人間が活きる社会になることを願っています。