1-3 家庭と社会の付き合い方・家庭内の情報化
井口ゼミナール:
責任者:下田 進一郎
参加者:小林 善人・定村 佳門・大道 雅俊・古城 潤治・島村 隆志・落合 理絵・関 悠子・松村 彰子・押野 真弓
- まえがき
今日、家庭のあらゆるところで情報技術は活用されている。例えば、"パソコン"つまりパーソナルコンピュータが挙げられる。以前は、業務用として会社や学校など、大規模な集合体のみで使用されていたコンピュータは、大型かつ高価なものとして、一般家庭には手の届かないものであった。しかし、徐々に改良されてコンパクトになり、OSも一般人向けに非常に便利になったことで需要も増し、各メーカー揃って競うように低価格化していった。その結果、現在ではほぼ一家に一台くらいの割合でパソコンが使用されるようになった。このように家庭にも浸透しつつある情報技術について、これからさらにどのように変化していくのか考えていきたいと思う。
- 未来の予想・予測
家庭という分野を『家庭と社会の付き合い方』『家庭内における情報技術の活用』という
2つのテーマに分けて考えていく。
@家庭と社会の付き合い方
普段家庭と関わりのある社会組織が今後どのように変わってくるか具体例を用いて想定
してみる。
金銭的な関わりのある銀行との付き合いはどうなるだろう? どこにいても(直接その銀行にいかなくても)振込みや貯金や引き落としなど自分の預金口座を操作できるようになるだろう。これはATMがコンビニのほかいたるところに置かれ、お金の預け払いがどこでもできるようになるという意味ではない。今はまだ実験段階にある電子マネーが世の中に普及し、カード1枚で金銭管理ができるようになれば、直接自分の預金口座にアクセスできるようになるだろう。家庭に電子マネーカードのリーダーのような端末があれば、残高照会や通帳記入の必要もなくなる。お金を直接持ち歩くという概念もなくなり、後述のお店との金銭のやり取りも注文票同様ネット上で行うことが可能となるだろう。今後金銭のあり方そして金融機関のあり方自体が大きく変化していくのではないだろうか。
子供そして私たちが毎日通う学校との付き合い方はどうなるだろう?現在、テレビやラジオを用いて授業を提供している学校がある。しかしこの場合、学校側からの情報を一方的に受け取ることになり、生徒は質問があったとしても先生とリアルタイムに情報のやりとりを行うことができない。同様に生徒同士の話し合いやディベートもできない。そこで、各家庭にテレビ電話を発展させたような通信機器を設置し、オンラインで授業することで、リアルタイムでの生徒教師間のやり取りを可能にするのである。こうすれば学校に通っているのと同じような状況で家庭にいながら授業を受けることができるようになるだろう。
店との付き合いはどうなるだろう?現在でも一部の店で行われているように、直接その店にいかなくても買い物ができるというのが当たり前になるだろう。例えば、スーパーマーケットにその日の食事メニューに必要な材料をメールで送ると、その商品を配達または郵送してくれるのである。これらの目的はもちろん楽をしようというものではなく、お年寄りや体の不自由な方や昼間買い物にいけない人が、わざわざ買い物に行って探し歩かなくてもほしい時にほしい物を入手できるということだ。また、同じ食品でも店によって値段に差がでてくるので、家から近いいくつかのスーパーマーケットの中でその日1番の最安値をつけている店を検索するシステムがあったら面白いかもしれない。
世の中の情報を知る手段のひとつである新聞は、新聞社と契約する時に一つの薄い情報端末が渡され、そこにリアルタイムに情報が配信されるようになるかもしれない。これは資源の無駄を減らし、かつ新聞配達という労働力も不要となるため、いち早く取り入れられるかもしれない。しかし今現在すでに、インターネット上でも最新ニュースを読むことができるようになっている。これを考えると今ある新聞配達という形態だけでなく、そのうち新聞というもの自体が姿を消すことになるかもしれない。
A家庭内における情報技術の活用
家庭内では今後どのように情報技術が使われるのか、現在どの家庭にでもある家電製品・自動車・鍵の3つの例を用いて想定してみる。
現在でも家電製品にはたくさんの情報技術が使われている。それらがどのように発達するか考えてみよう。例えば、現在のエアコンは、人が設定した温度に合うように動いている。この『人が設定する』ということが『コンピュータが設定する』に変わるだろう。つまり、コンピュータがその日の・天気・温度・湿度からその季節に人が最も心地よいとされる温度を割り出し、勝手に調節するのだ。そのほかの家電製品もすべてコンピュータによって制御され、1つの情報端末で管理することによって、家の中からだけでなく外出先からの操作も可能になるかもしれない。そうなれば、人が設定しきれないものも勝手に調整してくれ、今よりももっと快適な生活を送れるようになるだろう。
また自動車についてもさきほどの例と同じように『人が運転する』から『コンピュータが運転する』に変わるかもしれない。コンピュータが車間距離をモニターで確認してぶつからないように調節したり、障害物を察知して自動で回避したりと人が運転する時に行う動作を完璧に行えるようになれば、自動で運転してくれる自動車も出来るかもしれない。
最後に、家庭で防犯のために用いる鍵について考えてみる。現在の鍵は、『鍵』という個体のものを用いて行っている。これが『指紋、網膜、声帯による鍵』に変わっていくだろう。こうすることで登録した人以外には開けることができなくなり、今の鍵では防ぐことのできない犯罪を防げるほか、鍵をなくすといった心配もなくなるのである。また、0〜9の数字がランダムに表示され、遠くから見たのではその暗証番号の分からないようになっている電子鍵なども普及するかもしれない。
- 問題点
これら情報技術を家庭に発展させていくことは、生活が非常に便利になるという点では、
画期的であるが、問題点も多い。
まず1つに、プライバシー保護の問題が挙げられる。これは、情報技術が発展した現在、深刻な問題である。上記の説明においては、"銀行"のところで問題になる。個人資産の管理や電子マネーなど、"お金"という物質的なものを介すことなく取引が行われることは、手間がかからない反面、実は危険なのではないだろうか。インターネット上での個人情報の漏洩による犯罪など、技術が発展すればするほど、その技術を悪用する人もいて、これから未来において、如何にして家庭、個人のプライバシーを守っていくのかということが課題である。
2つめに、コミュニケーション不足という問題が挙げられる。上記の説明においては、"教育"と"スーパーマーケット"のところで問題になる。病気などで欠席してしまったとき
や、自分の都合に合わせて好きなときに勉強できるという点で、家庭で教育を受けられる
ということ、また、好きなことをしながら食料や日用品の買い物ができるということは、非常に効率的である。しかし、人が成長していく過程で、学校での友人や先生とのコミュニケーション、お店などでの他人とのコミュニケーションはなくてはならないものである。このことは、システムを考える上で、重要視しなくてはならない点である。
3つめには、家庭内で考えられるすべてのシステムにおいて、地震や災害などで電気が止まってしまったときの損失が大きいという問題が挙げられる。何事もなく便利に暮らしていると気が付きにくい点であるが、万が一の災害時に備えて、対策を考えておく必要がある。
以上の問題点が挙げられるが、すべてにおいて言えることは、システムを開発する際には、その使用目的を明確にした上で、起こりうる問題の対処法を考えていくことが必要不可欠である。
- 解決する方法・見通し
プライバシー問題等を解決する方法としては、暗号やステガノグラフィーに代表される情報セキュリティーがまず考えられる。今も頻繁に使われているあらゆる暗号はいずれ解読されてしまうことだろう。しかし情報化が進めば、よりユーザーの安全を守ることが可能な暗号が考えだされるに違いない。鍵の例で述べたように登録者でなければ扱うことができないような方法をとれば他の誰も解読できず、操作することもできなくなるだろう。
学校でのコミュニケーションの手段としては、今の授業形態そのままを実現できるようなシステムを考え、体育のようなものは課外授業といった形で取り入れればよい。今でさえ、携帯が普及しメールが多く使われることで、友達同士のコミュニケーションの取り方が変ってきているのだ。また違った形のコミュニケーションをとるためのシステムが開発
されることも考えられる。つまり情報化が進めば、コミュニケーションの取り方自体が変っていったとしてもおかしくないだろう。
最後に災害によって全システムを制御する電気が落ちてしまった場合だが、これは万が一に備えて、補助電源みたいな物を用意しておく必要がある。これはソーラーシステムなどの災害で止まってしまうことのない自家電力にしておけばよいのではないだろうか。これなら電気会社からの供給がストップしてしまったとしても、困ることはないだろう。
以上のことより次々に出てくるであろう問題点に対して、その解決策を充分に考えた上でシステム開発をしていけば、情報化は家庭に便利で快適な暮らしをもたらすだろう。
- 考察・意見
情報の分野は非常に幅が広くどの分野とも関わりを持っているので、これから先の社会においては、上で述べてきたようなシステムや機器、あるいは現段階では想像もつかないような画期的なものが考え出されることになるだろう。
しかし、現在のようにあらゆるものに便利さを求める開発や現在でさえ情報化のスピードについていけない人たちを目の前にして、家庭において情報化を推し進めていくことが、良いこととは思えない。あまりに便利になり過ぎてしまうよりは、人のためにも最低限の不便さが残るような開発がなされるべきだ。また、実際には情報化社会は家庭でも急速に形成されつつあるので、情報化のスピードを緩めるよりも、高齢者でもそのスピードについてこられるような開発がなされるべきだ。
- 後書き
以上、いろいろと述べてきたが、情報技術の発展はめざましく、私たちの生活にとって必要不可欠である。しかし、情報技術を使う意味を考え、問題点を認識するとともに、人間の本来あるべき姿はいつまでも大切にしていくべきである。